10歳になった君へ


10歳の誕生日おめでとう!

君が生まれて今日で10年、今まで元気に育ってくれて本当にうれしいよ。
名前を付けるときは、どんな人に育って欲しいか、たくさん考えて付けたんだよ。
でも名前通りに、心が優しくて芯の通った子に育ってくれてうれしく思ってるよ。


「何を大事にするべきか」
これから色々なことがあると思うけど、いつも心の中にそれを思っていれば、すてきな出会いと経験がたくさん待ってるはずだよ。

パパにとっては、今日は二重に特別な日なんだ。
一つは、もちろん君が10歳になったってこと。
もう一つは、パパが10年前に決めた通りに、10歳になった君にこうして会えてるってこと。


どういうことか、って?
10年前に君が生まれたとき、パパは10年後の君に会うために、生き方を変えよう、生まれ変わろうって決心したんだ。

なぜなら、10年前のパパは、今とは違って、まだまだ甘ったれで中途半端だったから。
それで「やばい!このまま今と同じように生きていたら10年後の君に置いていかれる!」って思った。
パパは、0歳の君だけじゃなくて、10歳になった君とも一緒に生きていたいって思ったんだよ。


君が生まれる3年前に、東日本大震災があったんだ。
そのときパパは、こういう大変なことが起こったときに、何も出来ずに誰を助ける力もない自分の無力さを知って、
人や社会のために自分の存在や力が役に立つ人間になりたいって思った。
「私は○○です。」って名乗れる人になりたいって思った。
「私はタブラ奏者です。」って名乗れる人になりたい、プロとして人の力になれる人になりたいって思った。

3年後に君が生まれて、10年後の君とパパ自身を想像したんだよ。
タブラでは、まだまだプロにはなれてなかったから「私はタブラ奏者です。」って胸を張って言えるようにはなってなかった。
そのときは、プロになることに憧れていた、ただのアマチュアのタブラ好き、なだけだった。

それで、10年後にはプロになれているかな?
なんちゃって、じゃなくて、本物のタブラ奏者になれているかな?
胸を張って10歳の君と会えてるかな?
って想像してみたら「今と同じことしてたんじゃだめじゃん」って強く思ったんだ。

「ウチのおやじだせぇんだよ。インド音楽なんてよくわかんない音楽やっててさ…」
って、そのときはそんな言葉が聞こえてきたような気がしたんだよ。


なんでそんな風に思ったか、そもそも「プロのタブラ奏者」なんて職業は日本にはなかったし、
自信もない、実力もない、とか他にも理由は色々あるけど、そんな話も君の役に立つことがあればいつでも話すよ。

とにかく、「あきらめながら」とか「ごまかしながら」とかは嫌だったから、
「生まれ変わる」ってことだけ決めて、今までと違う生き方を探し始めたんだよ。
どうしていけばいいかなんて全然分からなかったし、苦しくて辛いこともあったけど、今日のために頑張って来ることが出来た。


君が生まれてきてくれたおかげで、君だけじゃなくて、パパも成長することが出来て今日ここにいるんだよ。

生まれてきてくれてありがとう。

忘れないでほしいのは、
自分の命だからって自分だけのものじゃなくて、周りの人にとっても大事なものだからね。
いつも応援されてるってこともだよ。

10年後にもまだまだ置いていかれるつもりはないぜ!

2024年5月吉日
タブラ奏者 指原一登